日本語 / B1
分福茶釜
むかし、上州の茂林寺というお寺に、古い茶釜がありました。お茶に使う湯をわかすための道具です。
ある日、和尚さんがその茶釜を火の上につるそうとしたところ、突然たぬきの頭としっぽが現れました。それだけでなく、全体が毛でおおわれてしまったのです。
驚いた和尚さんは、寺の若い弟子たちを呼び集めました。みんながどうしたらいいかと話しているうちに、茶釜は空中に飛び上がり、部屋の中を飛び回り始めました。
和尚さんも弟子たちも追いかけましたが、とてもすばやく、なかなかつかまりません。ようやく茶釜を落として押さえ、全員で力を合わせて箱に閉じ込めました。もう困らされないよう、遠くへ運んで捨てようと考えたのです。
ところが、その日に限って、寺の道具をいつも修理している職人が訪ねてきました。和尚さんは、ただ捨ててしまうより、少しでもお金になったほうがいいと思いました。
箱から出した茶釜は、いつもの形に戻っていました。頭も、しっぽも、毛もありません。職人はそれを見て、銅のお金二十枚なら買うと言いました。和尚さんは喜んで売り、厄介な道具がなくなったことに安心しました。
職人は買った茶釜を荷物と一緒に家へ持ち帰りました。ところが、その夜、寝ていると枕の近くで妙な音が聞こえます。布団の中からそっとのぞくと、毛の生えた茶釜が四本の足で歩いていました。
驚いて起き上がった瞬間、茶釜は元の形に戻りました。その後も、同じことが何度も起こります。何がどうなっているのかわからず、職人はとうとう友人に茶釜を見せました。
友人は、これは芸のできる、幸運を運んでくる茶釜に違いないと言いました。
「歌や楽器に合わせて踊らせたり、ロープの上を歩かせたりしたらいい。ショーとして各地を回れば、きっと喜ばれるよ。」
職人はよい考えだと思い、ショーを開く人と相談して、茶釜の芸を見せる仕事を始めました。
評判はたちまち広がりました。それぞれの土地を治める大名たちまで、ぜひ自分のところへ来てほしいと言うようになりました。お姫様や身分の高い女性たちも、踊る茶釜を見て大喜びです。一か所で芸を見せ終わると、すぐ次の約束へ向かわなければならないほどでした。
こうして職人は、思ってもいなかったほどの金持ちになりました。十分な富を得た後、彼は茶釜を茂林寺へ返しました。以前は捨てられそうになった茶釜ですが、今度は大切な宝として寺に納められ、人々からありがたいものとして拝まれるようになったのです。
English summary · includes the ending
At a temple, an old tea kettle suddenly grows a tanuki’s head, tail and fur. It flies around the room while the priest and his students chase it. They finally trap it in a box and intend to throw it away.
When a repairman visits, however, the priest sells it to him for twenty copper coins. It has returned to its ordinary shape.
That night, the buyer sees the furry kettle walking on four legs, then changing back whenever he gets up. After this happens repeatedly, a friend suggests presenting it as a performing attraction.
The repairman arranges shows in which the kettle dances and walks a tightrope to music. Its fame spreads, and wealthy lords and ladies invite it to perform. The owner becomes much richer than he expected.
Eventually, he returns the kettle to the temple, where it is preserved as a precious treasure and treated with religious respect.
Adapted for Lejrbår from the credited source.
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